鬼平犯科帳
1975年4月2日-9月25日 東宝株式会社、NET
サブタイトル カッコ内は原作・文庫の巻数 | ゲスト | |||
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1 | 用心棒 (文8) | 脚本 | 安倍徹郎 | ハナ肇、池波志乃、福田豊土、織本順吉 |
監督 | 小野田嘉幹 | |||
2 | 雨隠れの鶴吉 (文11) | 脚本 | 安倍徹郎 | 渡辺篤史、土田早苗、宮口精二、中井啓輔 |
監督 | 高瀬昌弘 | |||
3 | 盗みの掟 (文1「血頭の丹兵衛」) | 脚本 | 柴英三郎 | 垂水悟郎、桑山正一、八木昌子、高毬子 |
監督 | 高瀬昌弘 | |||
4 | だましあい (文9「白い粉」) | 脚本 | 井手雅人 | 山本圭、高品格、佐野厚子 |
監督 | 渡邊祐介 | |||
5 | 魔剣 (文1「暗剣白梅香」) | 脚本 | 小川英 | 木村功、内田朝雄、稲葉義男、藤田弓子 |
監督 | 小野田嘉幹 | |||
6 | 浅草・鳥越橋 (文9) | 脚本 | 笠原和夫 | 高津住男、橋本功、小松方正、水上竜子 |
監督 | 小野田嘉幹 | |||
7 | あきれた奴 (文8) | 脚本 | 井手雅人 | 河原崎長一郎、近藤洋介、服部妙子 |
監督 | 小野田嘉幹 | |||
8 | 盗人仁義 (文4「敵」) | 脚本 | 廣澤榮 | 山本麟一、香川良介、中庸介、浜田ゆう子 |
監督 | 高瀬昌弘 | |||
9 | 流星 (文8) | 脚本 | 野上龍雄 | 河村憲一郎、藤岡重慶、永井智雄、長谷川明男 |
監督 | 高瀬昌弘 | |||
10 | 人情同心 (文1「唖の十蔵」) | 脚本 | 井手雅人 | 長門裕之、入江若葉、小林昭二、江幡高志 |
監督 | 小野田嘉幹 | |||
11 | 土蜘蛛の金五郎 (文11) | 脚本 | 小川英 | 金田龍之介、伊吹聡太朗、原田君事 |
監督 | 野長瀬三摩地 | |||
12 | 凄い奴 (文9「本門寺暮雪」) | 脚本 | 小川英 | 中谷一郎、天本英世、小栗一也、嵯峨善兵 |
監督 | 小野田嘉幹 | |||
13 | おふさ伊之松 「四度目の女房」 にっぽん怪盗伝(新潮)より | 脚本 | 野上龍雄 | 古谷一行、高田美和、矢野宣、伊達三郎 |
監督 | 丸山誠治 | |||
14 | 高杉道場・三羽烏 (文12) | 脚本 | 柴英三郎 | 土屋嘉男、東野孝彦、今出川西紀、白石奈緒美 |
監督 | 小俣堯 | |||
15 | 二人女房 (文12) | 脚本 | 安倍徹郎 | ハナ肇、松本克平、原口剛、原知佐子 |
監督 | 小野田嘉幹 | |||
16 | 盗賊婚礼 (文7) | 脚本 | 井手雅人 | 滝田裕介、天津敏、中野誠也、伊沢一郎、夏純子 |
監督 | 高瀬昌弘 | |||
17 | むかしなじみ (文1「むかしの女」) | 脚本 | 野上龍雄 | 稲野和子、真山知子、深江章喜、永井秀明 |
監督 | 吉村公三郎 | |||
18 | 蛙の長助 (文10) | 脚本 | 廣澤榮 | 曽我廼家五郎八、殿山泰司、梅津栄、山添多佳子 |
監督 | 小野田嘉幹 | |||
19 | いろおとこ (文12) | 脚本 | 笠原和夫 | 大門正明、宇津宮雅代、清水将夫、吉行和子 |
監督 | 小野田嘉幹 | |||
20 | 川越の旦那 (文2「谷中・いろは茶屋」) | 脚本 | 井手雅人 永井素夫 | 佐野浅夫、川口晶、土方弘、玉川スミ |
監督 | 小野田嘉幹 | |||
21 | 盗賊人相書 (文6) | 脚本 | 井手雅人 | 西沢利明、蟹江敬三、長尾泰子、加藤和恵 |
監督 | 野長瀬三摩地 | |||
22 | 狐雨 (文9) | 脚本 | 小川英 | 寺田農、神田隆、伊佐山ひろ子 |
監督 | 高瀬昌弘 | |||
23 | 盗人姉妹(きょうだい) (文8「白と黒」) | 脚本 | 下飯坂菊馬 | 根岸明美、松木路子、原田清人、吉田義夫 |
監督 | 渡邊祐介 | |||
24 | 泣き味噌屋 (文11) | 脚本 | 櫻井康裕 | 谷啓、川合伸旺、大木正司、黒部進 |
監督 | 高瀬昌弘 | |||
24 | 鯉胆のお里 (文8「白と黒」) | 脚本 | 田坂啓 | 水野久美、藤原釜足、野口元夫、千石規子 |
監督 | 吉村公三郎 | |||
26 | 密偵たちの宴 (文12) | 脚本 | 野上龍雄 | 金井大、草薙幸二郎、福山象三、神山寛 |
監督 | 野長瀬三摩地 |
松本幸四郎主演で2シリーズ制作されたのち、主演を交代しての新シリーズ。
東宝プロデューサー・市川久夫が原作者・池波正太郎の意向を尊重しながらテレビ版『鬼平』を練り上げてきた経緯は、能村庸一『実録テレビ時代劇史』等の資料に詳しく書かれているが、そんな池波―市川サイドからの指名とは思いがたい(と思ったら決めたのはやはりNETテレビ側らしい)丹波哲郎の主演。
翌月からはTBSで『Gメン75』も始まり脂の乗りきった丹哲がとても心地よさそうに長谷川平蔵を演じている訳だが、案に違わずと言おうか、これが実に鬼平らしからぬ鬼平なのだ。許せぬ盗人に対しては“鬼”でも、その反面で懐の深いところを見せて配下や密偵たちを心服させるのが池波『鬼平』のポイント。丹哲鬼平は見事なまでにこの面を欠いており、本当に鬼。誰に対しても鬼。ひたすら鬼なのである。古今亭志ん朝が幸四郎版に続いて演じたハマリ役・木村忠吾なんぞ、「たわけ」と叱り飛ばされてばっかりである。
しかし、もちろん(ストーリーの展開上)ニクい計らいをすることもある鬼平。盗人に目こぼしをしたりもする。ところが丹哲がこういう真似をすると、どう見ても自分自身が満足するためのエエ格好しいにしか見えないのである。
思えば与力・同心・密偵らはキャスティング面に於いてもいくぶん影が薄い(言っちゃ悪いが佐嶋与力=小泉博、彦十=岡田映一あたりの印象の薄さは歴代随一)このヴァージョン、考えようによっては丹波哲郎のワンマンショーなのではないか。
吉外@サイト主がその点について別に批判的でない(むしろ歓迎している)ということは牝犬亭雑記「まさしく鬼・丹波哲郎の『鬼平犯科帳』」をご参照のほど。
そちらでも記しているのだが、丹哲ヴァージョンは原作を大幅にアレンジした脚本が多い。右記サブタイトルリストをご覧の通り、タイトルも大半はいじってあるし、なぜか役名も変えてあったりする(#3血頭の丹兵衛→黒雲の伝兵衛、#4勘助→勘次、#10小野十蔵→間十蔵、#16傘山の弥太郎→一文字弥太郎など)。それは些事に過ぎないとして、物語のアレンジについては例えば吉右衛門版に比してみても唸らされるものが見受けられ、作品としての再評価も今一度なされてしかるべきだろう。
(これはサイト主の勝手な主観かもしれないのだが)東京撮りの時代劇にそこはかとなく漂う、乾いた無法街めいた空気とこの上なくマッチしたハードボイルド作品として記憶したい。
最終更新:2013/06/11