剣客商売 御老中暗殺
 2012年8月24日 フジテレビ系
 ビスタサイズ 正味94分

キャスト スタッフ
 秋山小兵衛:北大路欣也
 佐々木三冬:杏
 おはる:貫地谷しほり
 秋山大治郎:斎藤工
 四谷の弥七:山田純大
 生島次郎太夫:山田明郷/飯田粂太郎:内野謙太
 おみね:栗田よう子/おつぎ:山下裕子/嘉助:平井靖
 牛堀九万之助:上田耕一
 飯田平助:斉藤暁
 一橋治済:神保悟志
 永井和泉守:鶴田忍
 大山左兵衛:小野了/永井右京:寿大聡/小出帯刀:いわいのぶ健
 お米:田中綾子/浅田虎次郎:大槻博之/和泉屋吉右衛門:谷口高史
 浅田祐二/川鶴晃裕/堀田貴裕/稲田龍雄
 大矢敬典/いわすとおる/笠原竜司/岡山和之
 加藤正記/東田達夫/船津正康/中島崇博
 鎌田栄治/円堂耕成/帯金伸行/畑中大空
 木下肥後守:西田健
 小川宗哲:古谷一行
 田沼意次:國村隼
 企画:成河広明(フジテレビ)、武田功(松竹)プロデューサー:足立弘平(松竹)
 原作:池波正太郎(新潮文庫 刊)
 脚本:金子成人
 音楽:大島ミチル
 撮影:江原祥二/照明:林利夫/美術:原田哲男/助監督:服部大二
 録音:中路豊隆/編集:園井弘一/スクリプター:竹内美年子/装飾:中込秀志
 殺陣:宇仁貫三/調音:上床隆幸/スチール:北脇克己/効果:藤原誠
 色彩計測:後藤善昭/小道具:小川忍/セット付:大河原哲/編集助手:関谷憲治、今西杏奈/演技事務:山緑美春
 製作担当:溝口豊/製作主任:小西剛司/進行:高塚映里香
 協力:能村庸一/料理指導:近藤文夫(銀座近藤)広報:為永佐知男(フジテレビ)題字:竹内志朗
 衣裳:松竹衣裳岡本房雄衣裳協力小紋屋 高田勝/床山・結髪・美粧:八木かつら曽我恒夫、津村直美、高崎光代
 カラーグレーディング:二星正樹/VFXスーパーバイザー:佐々木宏/CGデザイナー:鶴見祐輔/CGプロデューサー:斎藤大輔/オンライン編集:岩下純也/俳優事務:松本保子
 現像:イマジカウエスト/協力:松竹撮影所俳優G/装置:新映美術工芸/小道具:高津商会
 ロケ協力栗生 光明寺、京都 大覚寺、小倉山 二尊院、聖護院門跡、滋賀ロケーションオフィス、元離宮二条城、八幡堀を守る会、大本山 くろ谷 金戒光明寺、御靈神社、嵐山通船株式会社、大本山 隨心院、大本山 東福寺、嵯峨 宝厳院
 ナレーター:蟹江敬三
 製作協力:(株)松竹撮影所
 監督:山下智彦

 制作:フジテレビ、松竹株式会社

 藤田まこと亡き後、キャストを一新しての『剣客商売』単発スペシャル。
 大治郎が「ある人物の腕を叩き折っていただきたい」と依頼され、その裏にある大名の政略結婚を小兵衛が探索、佐々木三冬と知り合うことになる「女武芸者」(原作・新潮文庫版1巻収録)の話から、実は一件の裏には田沼意次の台頭を快く思っていない一橋治済の影があったとして、「御老中毒殺」(同じく1巻収録)へと繋げる造りになっている。
 政道の苦味を含んだ落着ののち、飯田粂太郎が大治郎の道場へ入門し、小兵衛・おはるの祝言でエンディングという単発ものとして手堅いまとめ方にはなったものの、ドラマの肝とも言うべき葛藤やそれを乗り越えて落としどころへ持っていく快感(所謂カタルシス)がどうにも希薄な新作。父・田沼に暗殺計画の一件を報せ、ここでぎくしゃくしていた親子の感情を晴らしグッとくるシーンに仕上げた古田求脚本(藤田まこと版第1シリーズ#4)の巧さを今さらながら思い知らされる。

 最後まで違和感が拭い去れなかったのは大治郎で、今回の若先生は真面目すぎる朴念仁と言うよりは“無気力な若者”。世相を反映しての造形か……? 何とか人生を楽しませようとする親父どのは何故かべらんめぇ口調を使う異色の小兵衛で、これはどうも剣術馬鹿が老後俗物化したのではなく、元から遊び人だったのではないかと疑いたくなってくる。してみると北大路小兵衛、どちらかといえば鬼平に近い人物なのでは。

 キャスティングで面白かったのは永井和泉守役の鶴田忍で、この人は藤田まこと版では三冬襲撃の依頼人・大山佐兵衛を演じている。今回でその主人役に格上げされたということで、何やら大石主税が浅野内匠頭になるようなスライドの仕方なのである。
 田沼意次役は、むしろ北大路欣也がやった方がよかったのでは等と初めのうちは思ってしまったものの、ミスキャストではないかと思っていた國村隼が意外なハマり役だった。終盤、一橋治済を相手にしての腹芸はなかなかのもの。

(2012/8/28)

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