暴れん坊将軍VIIあらすじ・評のページ
 1996-1997年 テレビ朝日/東映




第1話 江戸っ子神輿が吉宗を呼ぶ! 1996/07/13 →キャスト・スタッフ表


脚本:鈴木則文
監督:松尾正武

 老中首座に越後長岡の牧野候(中西宣夫)が据えられた幕閣人事に口出しする尾張宗春(中尾彬)、退けられたのを根に持ち、長岡から吉宗(松平健)の献上雪へ毒を仕込むという暴挙に出る。
 細工のため潜り込んだ隠密(北村晃一、森山陽介)に不審を抱いた中間頭・善平(赤城太郎)は殺され、彼の親友である岡っ引・仏の文吉(橋本功)がその意趣返しに尾張藩邸へ乗り込んでお手討ち。遺された男勝りのジャジャ馬・おぶん(生稲晃子)が十手を継ぐことになる第7シリーズ初回。

 お馴染み宗春公は今回も凶悪。気にくわない吉宗に石見銀山を盛って葬り去ろうという謀議は、尾張藩邸床下に潜んでいた御庭番(池谷太郎)がたまたま聞いていて知れるというのが安直と言おうかコスい筋運びに思えるが……。悪事は知れていながら吉宗の“恩情”をもって宗春公は強制帰国となり、これまた凶悪な家老・内田勝正が成敗の対象となる。
 山田朝右衛門(栗塚旭)はご祝儀出演のようなかたちで、取ってつけたように要所要所へフラリ現れ、ラス立ちでは尾張隠密を片付けていく。(2016/12/24)



第3話 母恋し! がまん涙の夢枕 1996/08/03 →キャスト・スタッフ表


脚本:鈴木則文
監督:荒井岱志

 しじみ売りの少年・大吉(西尾塁)は浪人の父・矢島彦九郎(片岡弘貴)と二人暮らし。仕官が叶えば会えると聞かされている母親を心のうちで慕いながら、父を支えて健気に暮らしていた。
 だが、その母(山本みどり)が若君の乳母として仕える丸亀藩には、お家騒動の火種が。若君を廃し自らが病の藩主に取って代わろうとする御舎弟・右京亮(遠藤征慈)を抑えるべく国家老・安藤帯刀(御木本伸介)が江戸入りするが、かつて娘と駆け落ちした“不義者”彦九郎を手討ちにしたと偽って逃していたことが発覚。逆に追い詰められ始末をつけるよう促された帯刀は、娘の涙に触れて再度彦九郎を逃そうとする。

 暴将シリーズも最初のほうから順を追って観ていると、山本みどりもこの頃になるとおっ母さん役かァと感慨深くなる。生き別れ瞼の母と晴れての対面は辰五郎の手配によって執り行われるが、陰には邪魔者(岩尾正隆)の目があり、わざと冷たく突き放す……ってな定石通りの泣かせが入る。この涙の親子対面が仇となって、帯刀と彦九郎が命を落とす羽目になってしまうあたりは辛口の筋運びだ。(2017/02/13)



第4話 花の吉原 空飛ぶおいらん 1996/08/10 →キャスト・スタッフ表


脚本:和久田正明
監督:宮越澄

 生き別れた弟・孫八(佐藤仁哉)を探してほしいとめ組に相談を持ちかける野太鼓の歌吉(め組OB・園田裕久である)。ところが弟というのは口実で、歌吉は吉原花魁の春霞(藤田佳子)に協力して彼女の親の仇を探していた。孫八が米の仲買人として出世し、今は押しも押されぬ大物の札差となっていることは割れたが、嗅ぎ回っていることがバレて歌吉は消されてしまう。その報と孫八の所在を報せた新さん、春霞が軽業あがりの身体能力を活用し、女を泣かせる悪い奴らを密かに“仕置き”している正体を聞かされ、大いに気っ風を買って力添えするのだった。

 太夫“外出中”の身代わりをつとめるおぶんのシーン、本筋と全く関わりないながらもやたら存在感あるバカ殿様(多賀勝一)が愉快。(2017/02/13)



第5話 卯之吉の死神退治 1996/08/17 →キャスト・スタッフ表


脚本:中野顕彰
監督:荒井岱志

 博奕で負け、死ぬ死ぬとヤケクソ仮病の友達・長太(西山浩司)から「死神を追い払った」め組小頭の卯之吉(三遊亭楽太郎)、その腕前を見込まれ長患いで寝込んでいる長太の弟・辰巳屋徳三郎(川嶋康義)の死神祓いを頼まれる。ところが身代乗っ取りを企む悪党ども、死神を除かれては困ると卯之吉始末にかかる。
 寝床を前後反転させるインチキは『死神』、色仕掛けで心中持ちかけ卯之吉だけ海へ飛び込ませる若後家(山本ゆか里)の悪計は『品川心中』と落語ネタ重ねたドタバタコメディ調、現・圓楽の楽太郎が本領発揮とばかり主役を張って、上様の影薄い一篇。(2017/03/08)



第6話 てんやわんやの親孝行 1996/08/31 →キャスト・スタッフ表


脚本:鈴木則文
監督:松尾正武

 源次(真砂皓太)が、出世してめ組の頭になったと大嘘ついた手紙を信じ、田舎からおっ母さんが出てくるというので大騒ぎ。辰五郎(北島三郎)が大山詣りで留守なのをいいことに源次を頭に仕立て、老母を喜ばせてやろうとする一同のドタバタに、浜松藩お家騒動がオマケのように展開される。
 ハイテンションな暴将の中に投入された菅井きんが負けじとお笑い調で演じる肝っ玉おっ母、源次の女房に扮したおさい(坂口良子)を肴にする一幕は、ムコ殿いびりならぬヨメゴ殿いびりかと笑わせる。(2017/03/08)



第7話 愛妻騎馬奉行 1996/09/07 →キャスト・スタッフ表


脚本:石川孝人
監督:荒井岱志

 町娘拐かしをみすみす取り逃し謹慎を命じられる北町奉行・兵藤筑後守(江藤潤)。かつて奈良奉行だった頃に新庄藩・桑山藩の領地争いを裁き、新庄の領主である若年寄・南条備前守(睦五朗)の逆恨みを買っていた。
 兵藤の妻(日下由美)は桑山藩重臣・本田甚三郎(長谷川明男)の娘という繋がりもあり、南条の意趣返しは桑山藩主(大竹修造)を陥れ同時に領地も横取りしてしまおうとの邪な欲心ずくで顕在化する。廻船商を通じ異国の武器商人からガトリング砲を買い付けさせ謀反の嫌疑をかけようとの罠、武士のハラキリ見たいと要求する武器商人のいけにえに選ばれた舅どのは主君を諫めながら壮絶な最期を遂げる。

 罪もない町娘たちが試し撃ちの的にされるという描写をはじめ人死に率は高めで、90年代後半にあって中々どうして過激な筋運び。桑山の殿サンがただの武器道楽でガトリング欲しがるだけなのでそこまで大事には至らないが、もしも多少なりと謀反の心があったりしたら……と思うと、もっと膨らんだ展開になりそう。
 ムツゴロウさんの悪あがきも「上様、こやつの威力をお見せ致す! 撃てィ!!」などとガトリング掃射するぶっ飛びようで笑える。(2017/03/09)



第8話 初手柄! おぶんの大奥退治 1996/09/14 →キャスト・スタッフ表


脚本:胡桃哲
監督:松尾正武

 宿下がりの大奥女中・お糸(武田京子)が胸を刺された死体となって掘割に浮かんだ。友人だったおぶん(生稲晃子)は大奥絡みとはいえ黙っちゃおれぬと探索に乗り出す。
 大奥を蝕む麻薬・天竺煙草の密売。密かに大奥へ持ち込んで売り捌いている巴屋(中村竜三朗)と接触しているのが、お糸の許嫁・小三郎(草川祐馬)と知ったとき、おぶんの中に疑惑が膨らむ。(2017/04/11)



第9話 吉宗よ、誰が為に泣く 1996/10/19 →キャスト・スタッフ表


脚本:鈴木則文
監督:松尾正武

 下駄の鼻緒をすげてやった縁で知り合った娘・おつる(中原果南)と新さん=吉宗(松平健)の割とマジな恋物語。おつるの長屋は霊巌寺門前町の建設を目論む寺社奉行(中田浩二)一派に用地として目をつけられており、おつるは借金のカタに奉行への貢ぎ物とされた上、女郎屋へ叩き売られる。

 身請け金二十両の工面を頼まれた田之倉の爺(船越英二)が吉宗に対し、一人の娘を救うのでなく世の中を救うのが将軍のつとめ、と苦言を呈するシーンも。
 二十両は辰五郎(北島三郎)が用意してくれるものの、取り壊しが決まった長屋にいる病気の母を案じ足抜けを図ったおつるは厳しい折檻を受けており、吉宗の腕の中で息を引き取る。
 珍しく冷静さを欠いた吉宗が私憤を爆発させてラス立ちに至るが、ちゃんと峰は返しているのはいつも通り。(2017/04/11)



第10話 夢で拾った百両 1996/10/26 →キャスト・スタッフ表


脚本:佐藤五月
監督:松尾正武

 のれん分けされた番頭(出水憲)の斬殺からくすぶる両替商・大黒屋(外山高士)の疑惑、火除け地の入札を巡って手を組む幕閣の大物とは──。酒好きの魚屋・虎吉(石井洋祐)が雑木林で大金を拾い、女房のお春(岩本千春)から相談受けたおぶん(生稲晃子)、新さん(松平健)がこれを夢ということにしてかれを改心させる落語「芝浜」アレンジ話を絡め、賄賂の運び役した浪人(井上高志)が実はお春の生き別れた兄という世話場も設ける。
 またも落語からのいただきネタでワルの成敗はますます以ておまけの如し。(2017/06/07)



第11話 魔剣! 鮮血の花嫁 1996/11/09 →キャスト・スタッフ表


脚本:田村多津夫
監督:荒井岱志

 祝言間近の商家子女が惨殺される事件が発生。おぶん(生稲晃子)が日野屋の娘・おせん(立原麻衣)から相談受けた父親(花上晃)の素行調査で明らかになった旗本主催の賭場と繋がり、借金取立て役の凄腕武士が絡む。

 小沢和義が祝言をキーワードに常軌を逸するアブナイ奴を演じハマりすぎて恐い。しかも日野屋の娘が、自ら手にかけた元恋人(立原麻衣・二役)と瓜二つなのでますますトラウマを誘発するから大変。
 囮役として花嫁姿に扮するおぶん、新さんとの祝言を妄想するイメージシーンあり、中でイチャつく二人が可笑しい。(2017/04/26)



第12話 仇討ち心中、盗まれた砂金 1996/11/23 →キャスト・スタッフ表


脚本:今村文人
監督:松尾正武

 酔っ払って火事場に遅れ、頭(北島三郎)のカミナリ喰らっため組の小頭・卯之吉(三遊亭楽太郎)。謹慎処分を受けてヤケのやんぱち、料亭の女と心中を図り、片割れの生き残りとして捕えられてしまう。
 心中相手であるおきく(北原佐和子)は行方知れずという点に不審を抱いた新さん(松平健)は、何故か旗本・磯部隼人正(亀石征一郎)を嗅ぎ回る女がその張本人ではと睨み、調べ始める。その背後には松前藩御用船を沈め砂金を強奪、実行役の漁師を始末した磯部の悪事が。
 房州の海を恋しがる男女には何となく今村文人そのひとが重ね合わされて思える脚本。卯之吉のおとっつぁん役には桂歌丸が迎えられ、登場シーンはこの人がただいるだけで落語的空間が造り出されいい味(やはり『笑点』人脈なのか?)。(2017/06/07)



第13話 凧よ、あがれ、誇り高く 1996/11/30 →キャスト・スタッフ表


脚本:藤井邦夫
監督:荒井岱志

 冷や飯食いの部屋住み連中が組織する“旗本厄介組”によって友達を手籠めにされたおぶん(生稲晃子)は怒り心頭。忠相(横内正)に相談するが、武家が相手となると係りは町奉行所ではなく評定所。動かぬ証拠でもない限り評定に持ち込むことはできないとたしなめられる。
 時を置かずに厄介組が働いた辻斬りで、現場に首領格の片山京之助(柴田善行)が印籠を落とした上、神崎清兵衛(田中隆三)という貧乏御家人が目撃しており、評定での証言を買って出る。新さん=吉宗(松平健)も偶然見知っていたこの男が証人なら厄介組の裁きも成ろうと安堵も束の間、突如として神崎は態度を変え証言を辞退する。背後には京之助の父で公儀目付である片山図書(西田健)による買収が……。

 息子・清太郎(中西勇太)の将来を思う神崎は、仕官の話を持ちかけられ心が揺れる。そんな神崎に「誠」の心を取り戻させるのは、清太郎に手ずから作ってやった凧。負傷したおぶんと共に潜伏する神崎が証言を決意するシーンは、大空に揚がる凧がキーアイテムとして効果的に使われる。
 繰り返し再放送される作品には往々にして「何故か偶然同じ回に遭遇する」という“ヘビーローテーション視聴回”が存在するのだが、アチシにとってこのVII#13はまさにソレ。何べん観たかなァー。ありきたりな悪役を演じるには眼光とか全ての面において鋭すぎる西田健が観る度に印象深い。(2017/06/07)



第14話 尾張宗春の謀叛 1996/12/07 →キャスト・スタッフ表


脚本:今村文人
監督:荒井岱志

 市井の軍学者・山下幸内(大出俊)が目安箱に政治向きの建白書を投じた。将軍・吉宗(松平健)に対し真っ向から批判を加えるこの硬骨漢に尾張宗春(中尾彬)が接近。仕官を餌に手元へ引き寄せておき、公儀配下を装った刺客を放ち幕政への不信をいよいよ高めさせ、武装蜂起に至らしめんとする謀略であった。
 愛弟子・又三郎(新田純一)を失った幸内はそれが宗春の悪企みとは知らず、奸賊の息がかかった門弟たちに焚きつけられ決起しようとするが……。

 オールドファンには懐かしい名であろう「山下幸内」がゲストキャラとして再登場、お馴染み宗春サマの野望の道具として使われる一篇。いかにも理論派の学者然とした大出俊の幸内はなかなかハマり役で、一回のみの出番にて退場は勿体ない。
 そしてこちらも毎回使い捨てのような尾張藩家老、今回はこの人・伊藤敏八である。この主君=中尾彬にこの家臣ありってな兇悪ご家老、見どころは散り際の鮮やかさと言おうかヤケクソぶりと言おうか……「もはやこれまで!」の捨て台詞と共に自爆して果てる。上様に「成敗!」の決め台詞すら言わせない見事な最期なのであった。(2017/12/18)



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