世界の片隅でクズ映画に愛をさけんだウツケもの
 久々に衝動で買い物をした。
 山崎圭司・編『悪趣味ビデオ聖書(バイブル)(2016年9月/洋泉社)。A5判五百頁超の大モノで、形に負けず内容も濃い。もともとムック本の別冊映画秘宝として出ていた『80年代悪趣味ビデオ学入門!』『80年代悪趣味ビデオ学の逆襲』の二冊を合本・補筆したもので、元の二冊は以前手放してしまっていたから丁度いいと即座に買っちまったい。
 当サイトのブログ「時代劇党宣言」にて任侠映画、セガール映画のレビューをぽつぽつ載っけ始めたのを潮に、他のジャンルをも含めた映画熱がムラムラいやメラメラと再燃してきた。どちらかと言えばロクでもない方向にばかり向いた嗜好ゆえ、この本に取り上げられているようなゴミビデオ、クズ映画は大好物である。

 今やすっかりレンタル屋からは姿を消してしまったVHSのクズ映画を、アチシも一時は駆けずり廻って借り求めたものだった。しかしあれもそう遠くない以前のこと、ゼロ年代後半の、徐々にVHSが片付けられていく時期だった。処分品として100円+税の捨て値で叩き売られる中から、お宝を探り当てようと躍起になったりしていた。
 己の中では価値ありと踏んで抑えておいたもので、手中に納め満足し積みっぱなしになっている間に、DVDでリリースされたものもある。そんなときは何となくガッカリしたものだった。稀少なモノを持っているんだゾという、誰に自慢する訳でもない優越感と言おうか自己満足が破られた感じであろうか。
 まァVHSはかさばるし劣化が早いしカビも生えるし、と至極もっともな理屈からアチシはそこまでVHSにはこだわらないようになってきた。が、幾つかの未DVD化クズ映画は今でもアチシにとっては大事な宝である(クリストファー・リー出演『サンタリアの復活/血塗られた暗黒大陸』とかピーター・カッシング出演『地獄のキャッツ・アイ/呪いの爪』、本家に失礼な邦題のイタリア製サメ映画『ジョーズ・リターンズ』とか……ほんとロクでもないのばっかだなァ)。

 それでも『悪趣味ビデオ聖書』は、読んでいると再びVHSクズ映画への郷愁を誘ってくる魔の書物である。まだまだこの世には埋もれたお宝があるのだナ、と。
 今はネットで簡単に取り寄せができてしまう時代ゆえ、書中に書かれたクズ映画群だって蒐集することは容易いかも知れない。よっぽど気が向いたら、尚かつ予算が豊富にあれば、の話だが……。
 巻末の締めくくりには、悪趣味DVD&ブルーレイの研究書が世界中で刊行されるときは来ないだろう、というようなことが語られている。果たしてそうだろうか? 確かに幾分ユルかった頃に比べれば、とんでもないアナーキーさのキワモノが紛れ込んでくる確率は低くなったかもしれない。が、DVD時代にはDVD時代ならではの輝けるクズ映画たちが溢れている、と断固アチシは主張する。
 毎月、洪水の如くリリースされるクズ映画たち。絶対量が多すぎるがために、淘汰されていく量も膨大だ。下手すりゃレンタルのみでいっとき陽の目を見て、セル版なんぞ出ないまま廃盤になっていくものだって多数あるだろう。
 ロクでもないながら愛すべき作品たちが消えていくスピードは、VHS時代に比べて実に速まっていると言っていい。
 VHSのまま消えていく作品もあるが、DVDで消えていくものも現在進行形で多数あることを忘れてはいけない。
 その語り部たる熱心なウォッチャーになるのは余りにも荷が重いけど!
(※いや、荷は軽いのだろうが量が多すぎて背負いきれまへんわ)

 また昨今はそうしたクズ映画を取り扱うブログ等もいっぱいある。執筆者各位はなるたけ良き手引きになるレビューを書いて、この素晴らしき素晴らしくないクズ映画たちを語り継ぐ役を果たして欲しいもんだ、とアチシは一歩下がって野次馬の立場から思っている。無責任だなァ。
 そして、願わくはそうした文章をまとめた新たな悪趣味DVDガイド本を、洋泉社が出してくれるよう……。

2018/10/20
*旧〈牝犬亭雑記〉2017/10/22掲載分を転載

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